10.マンチェスター・バイ・ザ・シー

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出演:ケイシー・アフレック、ミッシェル・ウィリアムス、カイル・チャンドラー、ルーカス・ヘッジズ
監督:ケネス・ロナーガン
プロデュース:マット・デイモン
映画館:シネスイッチ銀座 6月9日(金)レディースデイ


本年度のアカデミー賞で主演男優賞と脚本賞受賞を受賞し、他の賞でも数々のノミネートを受賞した話題の作品だけに、かなり興味を持って観てきました。
一生戻らないと決めて故郷の町を出た主人公が、兄の死をきっかけに戻らざるを得なくなった時の心の葛藤が丁寧に描かれていて、なぜ町を出たのかその悲しい理由と、彼を取り巻く人の人間愛と、少しの希望とが静かな感動につながる映画でした。

ボストンの郊外で便利屋をしているリー(ケイシー・アフレック)は、この先の人生になんの目標も希望もなく、ただ黙々と日々を過ごしている。
仕事はどんなことでもこなすが、あまりに愛想のない様子で、アパートの客ともめ事を起こすこともしばしば。。。
「F」のつく言葉でアパートの住人や雇い主の管理人とも怒鳴り合う。
住まいは殺風景な半地下の部屋。ろくな生活をしていないことがよくわかる。

ある日、兄が亡くなったとの連絡を受け、故郷マンチェスター・バイ・ザ・シーに戻っていく。
病院での彼の様子に、離れていても兄のことは慕っていたことが伝わってくる。
たった一人の理解者がいなくなってしまった悲しみと、そしてまた一人残された甥パトリックの後見人になるという現実に戸惑うリー。

映像は、数年前の、漁師である兄とまだ小さい甥と3人で、兄の船で釣りをしながら楽しんでいる様子や、リーの家族(妻と幼い娘2人、赤ん坊の息子)との会話などがところどころに映し出され、幸せそうな彼と現在の彼のあまりのギャップに、一体どんなことが起きたのだろうと不安になる。

一方、兄の忘れ形見の甥っ子は、いかにもアメリカのティーンエイジャー。
もっぱらの興味は、アイスホッケーと女の子と音楽。2人の女の子と同時に付き合いながら、悪びれる様子もない。
この”いかにも”という感じが、なんかユーモアがあって笑ってしまう。
そんな彼も、実は父を亡くした悲しみの塊が胸の中にあって、ふとした時にこみあげては爆発してしまう。

町に戻りたくなかったリーと、父を亡くしたパトリックが、色々なことが片付くまでの同居生活の最中にお互いの気持ちをぶつけ合うことで少しずつ歩み寄っていくのだが...

リーが町を出ることになるその理由がなんとも痛ましい事故だったことが、回想シーンで明らかになってくる。
それは、リーが自宅に大勢の仲間を呼んで酒にドラッグにと真夜中まで大騒ぎをした挙句、皆が帰った後に一人コンビニエンスストアまで買い物に行っている間に火事が起きてしまうのである。
戻ってきたときには、自宅は業火に包まれ、妻が「子供を助けて!」と泣き叫んでいる。
子供部屋が寒いからと暖炉に火をくべたまま、薪のストッパーをせずに出かけてしまったことが原因だった。火事は幼い子供3人の命を奪い去ってしまう。

その後、憔悴しきった様子で警察署で事情聴取を受け、「誰もが起こしうる不注意のせいなのだから自分を責めるな」となだめられても、自分自身を許せないリーが取った行動は、警官の拳銃を奪って自分の頭に向けて引鉄を引こうとする。複数の警察官に取り押さえられて未然に防ぐことはできたのだが、このシーンはかなり胸が痛かった。

描かれてはいなかったが、きっと子供を失い半狂乱になった妻からもありとあらゆる言葉で責め立てられたであろうことが想像できる。その後、兄や兄の友人がリーを気遣うのだが、彼はどんどん心を閉ざしていき、結局町を出ていくのである。

時が経って、再会した元妻も、再婚し子供が産まれたことで、リーのことを許せるようになり、あの頃の自分の態度を謝罪する。兄の親友もリーのことを気遣い、労わりの言葉をかけてくれる。
しかし、時が経っても、心の傷を癒すことはできず、甥の後見人になることも放棄して、ボストンに帰っていくことになる。

ただ、甥とのかかわり、兄の思い、元妻や兄の親友とのかかわりの中で、少しずつ心を開くことができ、殺風景だった半地下の部屋に甥が遊びに来られるよう家具を揃えるよ、と告げたことが、これからの彼の人生に小さな灯りがともったようで少しほっとした。
「癒えない傷も、忘れられない痛みも。その心ごと、生きていく。」
そう決心したリーの幸せを祈って。。。
重たいテーマの映画でしたが、見ごたえがありました。

最後に、この難しい役を見事に好演した主役のケイシー・アフレック(ベン・アフレックの弟)は、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞ほか各賞の主演男優賞を独占したそうです。

・・・naomi・・・







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by naomichan_2 | 2017-07-17 22:44 | 映画・ドラマ | Comments(6)
Commented by basia at 2017-07-18 21:59 x
いつもながらにきちんと整理されてストーリーが書いてあって、感心しています。私は面倒なのであらすじ適当・・・w
あの甥っ子は面白かったね。確かに今時のティーンエイジャーで、まあ二股かけてたり、適当に遊んでるって感じで。
甥っ子彼女のお母さんも面白かった。なんていうかみんな自分の欲望に貪欲、、というか。
その中での主人公の虚無な感じがまた際立ってたね。
正直、もっとすごい感動がある映画と期待してたのだけど、ちょっと肩透かしでもありました。えへへ。
Commented by naomichan_2 at 2017-07-19 21:39
> basiaさん
いつもコメントありがとうございます。
ストーリーといっても、ほとんど思い込みで書いているので、結構ずれていたりすることもあると思います(笑) あ、一緒にみたものはバレちゃうね。
うん、「主人公の虚無な感じが際立ってた」まさにそうですね。さすがbasiaさん、表現が適格!なかなかそういう言葉が出てこなくて情けないわ~。
映画の後のおしゃべりがとっても楽しいので、またよろしくです!!
Commented by ♥ junjun at 2017-07-20 20:59 x
🎵お祝いコメ、ありがとね!

割とコンスタントに 映画楽しんでるね。
junjunは 映画館に行く時間が 取りにくくて😢
もっぱら、 TVの ホームシアターばっかり😅

naomiさんの ストーリー説明は 解りやすく
観た気になれるから 不思議です。
Commented by hana-kurashi at 2017-07-22 18:52
naomiさまの紹介文に、どんどん引き込まれてしまいます。
主人公はピュアな心を持っているのでしょうね。傷も痛みも、その心ごと生きていく・・これからの人生に光がさしてくれることを願ってしまいました。
Commented by naomichan_2 at 2017-07-23 18:14
> ♥ junjunさん
完璧ネタバレしているので、もし、ご覧になりたい映画がありましたら、読み飛ばしてくださいね。
まったりしながら、TVのホームシアターもいいですよね。

Commented by naomichan_2 at 2017-07-23 18:19
> hanaさん
コメントありがとうございます。
映画を見た後に、すぐに感想を書きたいのですが、最近筆がなかなか進まなくて...
まだ2本も残っていますが、のんびり進めていこうと思っています。
これからも時々覗きにいらしてくださいませ。


日々の暮らしを切り取って。


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